日本の風習

庶民は『寝正月』が当たり前だった?!


From:渡辺知応

元日は各地のお寺や神社に初詣の参拝者が溢れているよね。
各家庭でもそれぞれの習慣によって新年のお祝いが催されていることでしょ。
どんなに不景気であっても元日のときだけはハレの活気を取り戻すのが日本古来の伝統なのだろ、、、と思いきや実はそうでもないのが、本来の日本の元日なんだよね。

時はさかのぼること、江戸時代の元日。
すなわち旧暦の正月一日はまったく様子が違っていたんだよね。
江戸時代に刊行された『絵本江戸風俗往来』には、元日の様子が以下のように書かれている。

「江戸中、町屋両側とも板戸を閉じて、往来すべて一物もなし。ただ犬の彼方此方に伏しけるを見る。今朝始めて道路に広きを覚えたる」

なんと。。。
大通りに立ち並ぶ商店はシャッターを閉ざし、大通りに見られるのはあちこちで寝そべる犬の姿ばかりという光景だそうだ。
無人の町のような光景が広がるのが江戸の元日ということなのだ。

江戸時代、町の主役たる商人達は、大晦日の除夜の鐘が練り終わるまで取り立てに走り回っていた。
徹夜で帳簿付けをして一年の総決算をする。
そして元日の朝は店を閉じて完全な休息を取ることを習いにしていた。

またいっぽうで、職人方や行商人は大晦日の夜にどんちゃん騒ぎ状態だったわけで、まぁ、その辺は今と変わらないが、、、
お祭り騒ぎをやらかしたあとは、終日営業の銭湯でひと風呂浴びて家に帰ったわけだ。
で、寝正月を決め込むのが、ごく一般的な元日の過ごし方だったんだよね。

まぁ、世間の大半がそんな感じだから、それに合わせて今で言うレストラン的なお店も、テーマパークなどの娯楽施設も、カフェなどのお茶をする所なども、元日には営業をしなかったそうだ。

つまり、江戸の元日とは町中が静止する日だったわけだ。

ところがどっこい、武家の方々町人のように寝てはいられなかったのだ。
諸国大名と名だたる旗本は『元旦登城』というシステムに朝から慌ただしかった。
つまり、江戸城に登って徳川将軍に年始のご挨拶しなければならなかったのだ。

元旦登城の時刻は明六つ時と決まっていた。
明六つ時は今でいう午前七時ごろ。
この年始の賀儀をおこなうためだけに諸国の大名はかならず前年末までには江戸の屋敷に入ることになっていたんだよね。
近くの大名はまぁ良いとしても、、、遠方の大名は一大行事だよね。

武士の社会は下の者が上の者に挨拶に出向くことを忠誠の証としていたわけで、これを怠れば『反逆の心あり』とみなされて厳重に処罰されたわけだ。
大晦日の晩に飲みすぎて二日酔いだから、病気のふりをして社長宅に年始の挨拶はパスしてしまおう。。。なんてことは絶対に通用しなかったんだよね。

そんなわけで江戸の元日には町人町はひっそりと静まり返り、江戸城の下の周辺には総勢5000人ほどの各地の大名や旗本が集まり元旦登城で江戸城は賑わうといったおかしな光景が広がるわけだ。

そうそう!そんな状況を見て頭のいい商人は目をつけたそうだ。
元旦登城の大名や旗本が集まる江戸城大手門、内桜田門前の周辺には元旦登城の様子を見物する者が詰めかける。
いくら寝正月とはいえ、珍しい光景を拝みたい人はいるわけだよね。
そんな人のために、寿司や蕎麦の屋台を出してちゃっかり商売をしていたという。

で、もっと頭のいいのが江戸城の城主である徳川将軍家なんだよね。
何をしたかというと、、、
それらの商人や見物客を取り締まったり追っ払ったりしなかったんだよね
元旦登城の華麗にして壮大な一大儀が江戸の町人にも徳川将軍家の権威を知らしめる格好の機械であったからね。

と、こんな感じで江戸の一年は始まるわけなんだ。
年越しギリギリまで働く人もしかり、どんちゃん騒ぎで遊ぶ人もしかり、寝る人もしかり、珍しいものを見る人もしかり、上手く商売をする人もしかり、権威を見せつける人もしかり、その割合こそは変わってはきているけど、、、
根本的には今も昔も変わらないのが日本の正月だということだよね。

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