Photo@Tom Koerner/USFWS

日本の昔話

ハッピーエンドにはほど遠い、残酷なストーリーの昔話


From:渡辺知応

桃太郎や浦島太郎、さるかに合戦に花咲じいさん。
鶴の恩返し、おむすびころりん、一寸法師に金太郎などなど。

あなたが知っている昔話は、、、
『昔々、あるところに…』という、不明確な時や場所を話の始まりとする発端句を用いていますよね。
つまり、『昔話』とは、本当にあったかどうかは知らないけれど、、、
という心持ちで語り継がれる、昔から人々の口伝えによって広まった、日本にある物語です。

代表的な昔話をみても、ハッピーな終わり方をする物語もあれば、なんだか切ない終わり方をする物語もありますよね。

しかし日本の昔話には、とっても残酷なストーリーで恐ろしい終わり方をする物語もあるのです。
今日はその一例として、『こんな晩は、、、』というセリフが印象的な昔話をご紹介したいと思います。

それでは、心の準備はいいですか、、、

これからお話するのは『六部殺し』という昔話です。
このストーリーが元になり『こんな晩は、、、』というセリフが入った民話や怪談が日本各地に伝わっています。

昔々、ある晩に、貧しい百姓の家へ旅の僧がやってきました。
一晩泊めて欲しい、、、そう言って宿を乞うたそうです。

昔は『六部』という巡礼の修行をおこなっている旅の僧侶を泊めることが功徳の一つとして受け入れられていました。

ちなみに六部とは、法華経一部八巻を六十六部写経した事を略して『六部』と言います。
さらにその法華経を持ち、六十六箇所の霊場を巡行し、一部ずつ奉納してめぐり回る巡礼僧のことを指します。
この修行を行う僧侶は、基本的には旅先で泊めていただく方にお世話になります。
ですが、いざという時の為に大金を持ち合わせているそうですが、、、

今回のお話に出てくる百姓夫婦はこの僧侶の荷物に大金が入っている事を知ってしまいました。
その大金に目が眩んだ百姓夫婦はどうしてもそのお金が欲しくなりました。
そして恐ろしい計画を立てたのです。

そうです。強盗殺人です。
その僧侶を殺して、遺体を誰にもわからないように処理して、そのお金を奪う計画を立てたのです。

計画は実行されました。
そして、百姓夫婦は奪ったお金を元に商売を始めました。
まぁ、人を殺してお金を奪う度胸がある夫婦ですから、まともな商売ではありません。

土地を担保に高い金利でお金を貸す。
返せなくなった相手からは土地を奪う。
(と言うか、金利云々よりも、初めから土地を奪うのが目的だったそうな。。。)
そして奪った土地を売ってお金を得る。
こんな感じで悪どい商売を繰り返し、、、
あっという間に大金持ちになったそうです。

しばらくすると、その夫婦に男の子が生まれました。
ですが、その男の子は成長しても一向に喋らないそうです。

そんなある晩のことです。
夜中に目が覚めた父親がふと子供を見るとトイレに行きたがっている様子でした。
当時のトイレは外にあるので一緒に行こうと家屋の外にでました。

外は生ぬるい風が吹き、小雨がチラつく夜だったそうです。

なんとも気持ちの悪い夜だなぁ。。。
あー。そいういえば、、、
あの僧侶を殺した時もこん天候だったな、、、

と、ふと思い出したそうです。

すると突然、口のきけないはずの子供が、、、
『おとっちゃん。。。』
うぉ、、、しゃべった?!
と、思ったのもつかの間、、、

『お前に殺されたのも、ちょうどこんな晩だったな、、、』

と言ったそうです。
下を向いていた子供が顔を上げると、、、
あの時殺した僧侶とそっくり同じ顔をしてギョロッとこちらを睨んだそうです。

物語はここで終わるのですが、後日談があるとかないとか、、、

昔々は違う村からやって来る旅人は異人(まれびと)として扱われていました。
今のように外部との接点が稀であった閉鎖的な村への来訪者は、新しい情報源や未知の技術をもたらす人、珍しい物品持ってくる人という異った人種であったそうです。

つまり、福をもたらす存在として扱われ、そのお客さん接待する事により、その客人が去った後に繁栄を得ると信じられた『まれびと信仰』の起源でもあります。

この信仰に根ざした民話は古くから各地に存在するのですが、、、
一方で、円満に福を頂けるケースだけではないようです。
客人とトラブルを起こし、強引に奪い取って繁栄を達成したケースが今回の『六部殺し』のような”まれびと殺し”の昔話を生んだようです。

この”まれびと殺し”の背景には人々の妬みが関係しています。
閉鎖的な村の一つの家が急に繁盛してきた場合、村社会の嫉みにより
「あれだけ儲かるには何かあくどい手段をとったに違いない」
と、いった妬みの僻みの中傷を周囲から受けます。

あれ?そういえば、あの家に旅の僧侶が泊まったな。
あれ?でもいつの間にかいなくなったよな。
(まぁ、旅人ですからいなくなるわな。わざわざお世話に似なってない人に挨拶するほど暇じゃなかろうに、、、)
するってーとあの旅の僧侶が持っていたお金を奪ったか?
といった具合に結び付けて、”まれびと殺し”の話が出来上がったこととなります。

また、同じ顔が生まれて云々というのは、妻や娘を夜伽に提供する「客人婚(まろうどこん)」との関連も考えられる。(これについてはまた今度詳しく書きます。)

これらの話の根底にあるのは、、、
素性の知れない他人と一緒に家で寝泊りすることへの潜在的な警戒が背景にると推測されます。
また、村々を訪れる異人たちは村人に富を与えるきっかけをつくり福をもたらすこともありましたが、、、
結果的に両者が共存することは許されない。
これも村社会の暗黙のルールの特徴と言えます。

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