二十四節気

『暑さ寒さも彼岸まで』は単なる気候の変化だけではなかった


From:渡辺知応

二十四節気にじゅうしせっきを知らなくても『春分しゅんぶん』は知っているという人は多いはず。
最もポピュラーな季節を表す言葉の『春分』は、太陽の中心が春分点に来たときを表すんだよね。
つまり、一年のうち、春分の日と秋分の日は太陽が真東から昇って真西に沈み、昼と夜の長さがほぼ同じになるわけだ。

新暦の春分は例年3月21日ごろと決まっている。(ちなみに今年は3月20日ね。)
それでも20日になったり21日になったりするのは、地球の公転の軌道が完全な円ではなく、心もち楕円形だえんけいをしているせいなんだよね。
一方、旧暦の春分は、太陽が春分点を通過する日と決まっているだけで、とくに二月の何日という、目安はないのである。

旧暦では、春分の日を中心に前後三日間を『春の彼岸ひがん』と呼んでいた。
まぁ、今でもその法則は変わってないけどね。
そして、昔の農家はこの時節に種まきを始めたんだよね。
つまり『暑さ寒さも彼岸まで』というのは、、、
「寒暖の変化がなく過ごしやすい季節になるぁ」という意味だけではないんだよね。
「これで氷や雪の心配をせずに心おきなく種まきができる」といった意味を含んでいたことになるわけだ。

さて、今年の春分の初侯は新暦の3月20日〜24日ごろに当たり『雀始巣すずめはじめてすくう』という。
雀が屋根瓦のや軒先に巣作りをする時節ってことね。
現代の日本人は、渡り鳥のツバメが軒下などに巣作りをすると「あぁ、初夏の季節になったなぁ」と思う。
がしかし、一年を通して町中にいるスズメについては、いつどこに巣作りをするかなんてことほとんど気がつかない。
というか、気にも留めていないよね。
昔の人の自然に対する観察力は、つくづく大したものだと思うよね。

そして、春分の次候は、新暦の3月25日〜29日ごろ。
花見が大好きな人は、「そろそろ見ごろになるなぁ」と目を輝かせ、指折り数えて待つ時節でもあるよね。
旧暦でも『桜始開さくらはじめてひらく』というんだ。
とはいえ、江戸の習慣では二月は『梅見』で三月が『観桜』と相場が決まっていたのだ。
で、この時節に上野の花見だとか王子の花見だとか騒ぐ者は、江戸っ子にはいなかったのであるw。
せっかちで定評がある江戸っ子も、行事の時期にはやたらと忠実だったことが伺えるよね。

最後に、新暦の3月30日〜4月3日に当たる春分の末候は『雷乃発声らいすなわちこえをはっす』という。
このころは、寒冷前線の通過によって暖気が押し上げられて発生する『界雷かいらい』が多くなる。
この界雷を昔の人は『春雷』『初雷』『虫出しの雷』などといったそうだ。
この時期の雷にだけ多くの名が付けられているのは、昔の人々が、寒から暖への大きな変わり目を強く意識していたからであろう。

さて、この時期から新年度の体制で新たな生活をスタートしている人が多いと思う。
新年の時と同様、気持ちを切り替えるにはちょうど良い時期でもあるよね。

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