From:渡辺知応
ことばは時代や地方によって変化します。
一つのことばのバリエーションや意味の広がりに注目してみるととても面白いことに気がつかされたりします。
たとえば江戸時代から用いられていることばに、、、
『引っ張りだこ』ということばがあります。
このことばの意味は、多くの人から期待を求められる様子を言いますよね。
語源は、蛸(たこ)の乾物を作るときに肢体を引っ張って広げることからきたことばです。
また、ある説ではあちらこちらから引き合うさまが凧(たこ)に似ているからだとも言います。
しかし江戸時代には刑罰の磔(はりつけ)のことを『引っ張りだこ』と言ったそうです。
やはり、その格好が似ているからだということでしょう。
それほど頻繁に行われたのではないにせよ、そうした刑罰のあった時代背景や社会においてヒッパリダコから連想される意味は全く異なるわけであります。
現在は社会の変化によって、多くの人に所望されるという意味に落ち着いています。
ことばの意味や展開の仕方には、それぞれの時代性や地方性を背負った独自の個性がうかがえます。
ことばって面白いですよねー。