From:渡辺知応
子供の頃の話です。
新しい靴を買った時は、家の中で履いて、走り回って、とても嬉しい気持ちになりその時のテンションはいつもハイマックスでした。
そしてそのまま外に出ようとすると、、、
一度脱いで、靴底を地面につけて、履き直してから外に出なさい!
と言われ続けていました。
どうでしょう?
実際こんな経験をした人は多いのではないでしょうか?
買ったばかりの新しい靴を家の中で履く事は子供の心理としてうなずけます。
わざわざ脱いで、玄関まで持って行って、地面に一度靴の底をつけてから、また履くという行動は面倒くさいと思うのもうなずけます。
そのまま外に出てもいいじゃん!!めんどくさい!
と、その子供心もわからなくはいないです。
ですがこの行動、真新しい靴を家の中で履いてそのまま外に出る行動は、日本の禁忌(きんき:日本のしきたり上、やってはいけないタブーな行動)なのです。
その理由ですが、葬儀の出棺儀礼によるところなのです。
昔は自宅で葬儀式をを営んでいました。
その際に棺桶を家から運び出す事になりますよね。
野辺送りで棺を担ぐ人たちが座敷や縁側で真新しいわらじを履き、そのまま棺をかついで庭先に出て出棺となります。
この事例は現代のように斎場やセレモニーホールが普及していない時代に全国各地で行われていました。
新しい履物をしたため、そのまま外に出るということは、特別な機会、、、
つまり『この世』から『あの世』に送る時のみに行われる行動ということになります。
だから、普段の生活では行ってはいけないと伝承されてきました。
ちなみにこの野辺送りの際に使われた草履などの履きもは墓地や帰りの道中に捨ててくる事が通例でした。
再び使用することは禁じられていたのです。
そうそう。
縁側から客人を招き入れる事を禁忌(タブー)としている地域もあります。
また、お盆や春秋のお彼岸などの棚経(たなぎょう:各家庭の仏壇にお経をあげに回る事)の際にお坊さんが縁側から家の中に入るのはこの名残からだそうです。