From:渡辺知応
『私の頬をそっと包んでくれた母の”たなごころ”は、柔らかく、そして暖かい記憶がある、、、』
高校生の頃、教科書に載っていたこの文章の一節にある『たなごころ』が気になった記憶があります。
はて?『たなごころ』とはなんぞや?
今ならGoogle先生に聞くところですが、、、
まだその頃はいなかったので、自分で調べました。
どうやら『たなごころ』とは『手のひら』の事だと書いてありました。
さて、現代ではあまり使われていない『たなごころ』という言葉ですが、それでも我々日本人の心の内にはしっかりと根付いている美しき日本の言葉と言えます。
『手のひら』を漢字にすれば『掌』です。
でもまぁ、『たなごころ』と『掌』が同じ意味であれば、『たなごころ』とかなで書く方が優しい感じがしますよね。
それもそのはず。
もともとこの言葉は『手の心(てのこころ)』の読み方が変化した言葉だそうです。
手の中心や手の大事なところといった意が込められているのでしょう。
味わい深い、優しい響きの言葉ですよね。
冒頭であげた文章の一節でも『手のひら』や『掌』と書いてあるよりも『たなごころ』と書かれているからこそ、優しい気持ちが伝わってくるものです。
心が通っている雰囲気がありますよね。
あまり使わなくなったとは言え、現代に生き残った古語の通例として、多くは慣用句の中に生きています。
例えば、『たなごころを返す』とは、『手のひらを返す』と同様の意味で使われることもあります。
事態を一変させること、または『裏切る』といった意味です。
『たなごころにする』とは手中に収めるといった意味ですし、、、
『たなごころを指すごとし』といえば、物事が明白である様子を言います。
まぁ、どれも『掌』に変えて言っても同様の意味で通じるとは思いますが、やはり『たなごころ』の方がどこか相手に対しての優しさを感じますよね。
そんな『たなごころ』ですが、右手の『たなごころ』と左手の『たなごころ』を合わせると、、、
そう『合掌』ですよね。
私たち日本人はお寺や神社に行けば必ず『合掌』をします。
つまり、自分が持ち合わせている『たなごころ』を合わせる習慣があります。
誰に教わったわけでもなく、自然とその心が現れる日本人。
なんとも素敵な言葉だと思う日本語でした。