日本のしきたり

境界にまつわる、タブーや不気味な話について。

From:渡辺知応

 

夕方の黄昏時とか、深夜の丑三つ時。
昔から、この時間帯には不気味な時間といわれ、オドロオドロしい話がつきまといます。

また、墓地や橋のたもと、村はずれにも不気味な話がついて回りますよね。
そんな場所には、お地蔵様や石仏、神々の祠がまつられています。

それはどうしてか、、、
時間にしろ、場所にしろ、そこは、どっちつかずの曖昧で不安定な状況の『境界』だからです。

夕方は、昼でもなく、夜でもない時間帯。
丑三つ時は、夜でもなく、朝でもない時間帯でもありますが、、、

丑の方角(北北東)は鬼門でもあり、あの世とこの世の『境界』でもあります。
なので、丑の刻はである午前1時から3時の間はその境界が開く時間であると信じられてきました。
ちなみに夕方は申の刻(午後3時から5時)です。申の方角は鬼門の逆側にあたります。
しかがって、この時間帯も境界であり、どっちつかずの曖昧で不安定な時と信じられてきました。

お墓も同様に、あの世とこの世の『境界』ですよね。
橋のたもとは土地と川の境目。村のはずれは、村と村との境目ですよね。

そして、この『境界』には禁忌(きんき:わかりやすく言えば、「してはいけないこと」、「タブー」)が数多く存在するのです。

していはいけない事をしてしまう、、、
そうです。タブーです。
そりゃ、不気味な話も一つや二つ出回りますよね。
これはこの世の摂理ですからね。

時間や場所、月日や方位、食べ物の他に、人間にも同様の事が言えます。
民俗学者の新谷尚紀氏は以下のように言っています。

 

妊婦というのは子供を宿した状態で、一人でも二人でもないどっちつかずの「境界」的な状況にある。だから妊婦にはさまざま禁忌が要求される。

(出典:民俗学がわかる事典/新谷尚紀)

と、言っています。

 

  • 妊婦は火事を見てはいけない。見れば産まれてくる子供に赤いアザができる。
  • 妊婦は葬式に出席してはいけない。出席すれば産まれてくる子供に黒いアザができる。
  • 妊婦は便所をキレイにしなければいけない。そうすればきれいな子共が産まれてくる。
  • 妊婦はほうきをまたいではいけない。またげば難産になる。
  • 妊婦は船に乗ってはいけない。
  • 産後、三十三日間は橋を渡ってはいけない。

 

などなど、、、
物理的や化学的に因果関係のなさそうな禁忌が数多く伝えられいます。

なるほどなるほど。
思い返せば、確かに安産祈願の方法や由来などを勉強してると、決まり事が多いことに驚かされます。
これも、さまざまな禁忌を避けるための方法なのだと考えれば、合点がいきます。

前回お伝えした、敷居や畳の縁も同様に「境界」だと考えれば、『境界線は踏んではいけない』と合点がいくのではないでしょうか。
そうそう。ヨーロッパなどの土地が繋がっている場所での国境を目の前に、その国境を踏まずに、またぐのも同じ心理だと言えます。

人々はさまざまな「境界」を無意識の内に特別な場所と考えて生活していたと言うことですね。

たしかに「境界」は不気味でもあり、特別な場所でもあります。
ですが、これは一つの解釈でしか過ぎません。

多くのしきたりや風習において、境界論で説明がつく事例が数多く出てきます。
しかし、その言い伝えや伝承、しきたりや風習がある現場にはもっと重要で深い意味があるはずです。
現に、敷居や畳の縁を踏んではいけないのは、その道ならではの理由があるようです。

物事の由来や意味を知り、今後に生かすこと。
これこそが、何よりも大事だと私は考えます。

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